親が亡くなったらすぐ確認!株式・投資信託など金融資産の相続手続き 完全ガイド

大切なご家族、特にご両親がお亡くなりになられた後の深い悲しみの中、相続手続きを進めなければならない状況は、精神的にも時間的にも大きな負担となります。特に、故人が株式や投資信託などの金融資産を多く保有されていた場合、その手続きは不動産などとは異なる特有の複雑さや注意点が存在します。
金融資産が大きな割合を占めるケースでは、価格変動リスクもあるため、手続きを放置しておくと、思わぬ不利益を被る可能性もあります。
このコラムでは、金融資産を相続する際に必要な手続きの流れと注意点を、ステップごとに分かりやすく解説します。
はじめに:金融資産の相続は時間との勝負
相続が開始したら、まず心を落ち着けることが大切ですが、同時に金融資産の相続手続きは迅速に進める必要があります。なぜなら、株式や投資信託は日々価格が変動するため、手続きが遅れるとその価値が変わってしまう可能性があるからです。
まずは、以下の基本的な事項を確認しましょう。
- 相続人の確定
誰が相続人になるのか、戸籍謄本などを収集して正確に把握します。 - 遺言書の有無
故人が遺言書を残していないか確認します。遺言書があれば、原則としてその内容に従って手続きを進めます。公正証書遺言以外の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要になることもあります。
ステップ1:遺産となる金融資産の全体像を把握する
相続手続きの第一歩は、故人がどのような金融資産を、どこに、どれだけ保有していたかを正確に把握することです。
- 証券会社・銀行への照会
故人が取引していた可能性のある証券会社や銀行に連絡し、「残高証明書」や「取引履歴」の発行を依頼します。請求には、故人の死亡が確認できる書類(除籍謄本など)や、請求者が相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)が必要です。金融機関ごとに必要書類が異なる場合があるので、事前に確認しましょう。 - ネット証券・ネット銀行
最近増えているネット証券やネット銀行の口座は、通帳や取引報告書が郵送されないことも多く、見落としがちです。故人のパソコンやスマートフォンの履歴、メール、郵便物などを手掛かりに、漏れなく調査しましょう。 - 特定口座・NISA口座など
特定口座やNISA口座(非課税口座)で保有されていた金融資産も相続の対象となりますが、NISA口座の非課税メリットは相続人に引き継がれません。相続後の扱いや税金について注意が必要です。 - 海外資産
海外の証券口座や預金なども相続財産となります。手続きは国内資産より複雑になるため、早期に専門家へ相談することをおすすめします。
これらの調査には時間がかかることもあります。早めに着手し、資産リストを作成しておくと、後の遺産分割協議などがスムーズに進みます。
ステップ2:証券会社・銀行での具体的な手続き
金融資産の全体像が把握できたら、各金融機関で具体的な相続手続き(名義変更または解約・払い戻し)を進めます。
- 金融機関への連絡と必要書類
各金融機関の相続担当部署に連絡し、所定の相続手続依頼書や必要書類を確認・提出します。一般的には以下の書類が必要となります。- 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印が押印されたもの)または遺言書
- 金融機関所定の相続手続依頼書
- 相続人名義口座への移管
株式や投資信託をそのまま相続人が引き継ぐ場合、相続人名義の証券口座が必要です。口座がない場合は新規に開設する必要があります。手続きは、代表相続人が行うか、相続人全員の同意書が必要となる場合があります。 - 売却して現金化
相続した株式や投資信託を売却して現金で受け取ることも可能です。ただし、売却益が出た場合は譲渡所得税が課税される可能性があります。また、売却のタイミングによっては損失が出るリスクもあります。
金融機関ごとの手続きは煩雑で、多くの書類提出が求められます。不備があると手続きが滞るため、正確かつ迅速に進めることが重要です。
ステップ3:遺産分割協議と名義変更
相続人が複数いる場合、誰がどの金融資産をどれだけ相続するかを話し合いで決める「遺産分割協議」を行います。
- 金融資産の評価
相続税申告や遺産分割のため、金融資産の価値を評価する必要があります。上場株式は、原則として相続開始日(故人が亡くなった日)の終値など、いくつかの評価方法の中から最も低い価額を選択できます。投資信託も基準価額を基に評価します。 - 公平な分割方法
金融資産は銘柄によって価値が異なり、単元株制度などもあるため、物理的に均等に分けるのが難しい場合があります。- 現物分割:銘柄ごとに相続人を決めて分ける方法。
- 換価分割:全てまたは一部を売却し、現金で分ける方法。
- 代償分割:特定の相続人が多く取得する代わりに、他の相続人に金銭(代償金)を支払う方法。
- 遺産分割協議書の作成
話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。金融資産については、「〇〇証券株式会社の△△株式〇株を相続人Aが取得する」のように、金融機関名、銘柄、数量などを具体的に記載します。この協議書は、金融機関での名義変更手続きに必要となります。
遺産分割協議は、相続人間で意見が対立しやすいポイントです。客観的な評価額に基づき、冷静に話し合いを進めることが大切です。
注意点と専門家の活用
金融資産の相続手続きには、いくつかの注意点と期限があります。
- 相続放棄・限定承認
相続財産に借金が多い場合などは、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要です。 - 準確定申告
故人に所得があった場合、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に所得税の申告と納税が必要です。 - 相続税申告
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税が必要です。金融資産が多い方は、相続税が発生する可能性が高いため注意が必要です。
これらの手続きは複雑で、多くの時間と労力を要します。特に金融資産の種類が多い場合や、相続人間で意見がまとまらない場合は、専門家である行政書士にご相談いただくことをお勧めします。
行政書士ができること
- 相続人の調査・確定、戸籍謄本等の収集
- 相続財産調査のサポート、財産目録の作成
- 遺産分割協議書の作成サポート
- 金融機関での相続手続きに関する書類作成サポート
- 遺言書の有無の調査、検認申立のサポート
私たちは、煩雑な相続手続きをスムーズに進め、皆様のご負担を軽減するためのお手伝いをいたします。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。